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【レビュー】ホーカー・シドレー ハリアー / 第1集掲載(型紙)

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【レビュー】ホーカー・シドレー ハリアー / 第1集掲載(型紙)



紙飛行機の醍醐味の一つとして、実在する航空機を模して飛ばすことが出来ることが挙げられる。航空機好きにとって、“自分が好きな航空機”が空を優雅に飛ぶ姿は、創作紙飛行機とはまた違った味わいをもたらしてくれる。二宮先生はこうした実在機の紙飛行機を、人物の横顔という意味の「プロフィル(プロファイル)・モデル」と呼び、「よく飛ぶ紙飛行機集 第4集」にそのかんたんな設計法、アレンジ方法をまとめられているが、先生自身、初期の頃からマニアックなセレクトの実在航空機のプロファイル・モデルを掲載し航空機マニアのハートを掴んでこられた。1960~70年代に活躍した軍用機、とりわけジェット戦闘機の流麗な立ち姿は当時の少年ら(のうち飛行機が好きな子たち)の憧れだったはずだ。自分もその例に漏れず、小学生の頃は先生の作品のうち、特に後退翼を持つジェット機ばかり作っていたことを覚えている。この2020年代においては最早、ジェット機が子供の憧れであるとは言い難いが、その姿が、男子にとってかっこいいものであるということには変わりない。
ホーカー・シドレー・グループは、英空軍で活躍した軽量戦闘機“ハリケーン”や、パワフルな攻撃機である“タイフーン”、およびその派生であり大戦末期の連合軍を支えた重戦闘機“テンペスト”を生み出したホーカー社が起源の航空機会社である。ピエール・クロステルマン中尉の「Le Grand Cirque」によく登場していたアレである。強靭なドイツ空軍を破った英空軍が戦後、おそらくはちゃっかりドイツの技術を参考にしながら(なぞのプライドを持つ彼らは絶対に認めやしないだろうが・・・)、グロスター・ミティアから続いたジェット機の系譜を発展させ続けた結果として生み出されたのがこの「ハリアー」なのだと思う。垂直離着陸のできるいわゆるVTOL機であり、主に空母からのSTOLとして運用された、イギリス人を素直に褒めたくはないが非常に画期的な機体だったと言える。

何が言いたいかというと、このハリアーは非常にかっこいい。飛行機好きな子供なら作りたくて仕方なくなるはずだ。しかしこの紙飛行機は筆者が紙飛行機にハマった時点で絶版になりかけていた第1集の、しかも型紙のみの掲載で、以降切り抜き集に掲載されることはなかった。(海外書籍「AIRBOURNE ALL-STARS」でも掲載されたが、そちらもやはり型紙)小さい子供に、精密な部品の集合体である二宮式紙飛行機の、ましてや複雑な形状のプロファイル・モデルのケント紙への複写は無理である。小学校2~3年生の当時、どうしてもこのハリアーが作りたかったが写し取る技術もやりかたも分からず、無理やり型紙を切り抜いてのりで貼り付けたりもした(当然の結果として、型紙の裏面にあるHFB-320ハンザと、ミラージュIIIは貴い犠牲となった)が、飛ぶわけもなく惨敗。小学校高学年~中学生のあたりでまち針を使った模写をやりようやく飛ばすことができたが、複雑なデザインのコクピットを模写しきれず、あまりかっこよくは作れなかったと記憶している。それが今となっては、スキャナーで取り込んでおきさえすれば何度でもケント紙に直接印刷することが出来る。無論、個人で楽しむ範囲内に限る(本ブログでは筆者オリジナルの機体を除き、型紙全体のキャプチャの掲載はしない)が、多少なりともソフトウェアが扱える世代であれば、Adobe PhotoshopやIllustratorのように画像加工にすぐれるソフトを活用してデザインを加えたり、ずれた部品を修復したり、サイズの拡大縮小、カタパルトフック取り付け、更には設計変更まで、自由自在である。正直な話として、自分がコンピューターを曲りなりにも扱えることをこの時ほど喜んだことはない。仕事? そんなの、どうでも良いじゃないか。すけべな男子がアダルトゲームをしたくてPC-9801をドンガラの状態から組んだりしたように、インターネット黎明期に通信がしたくてWebやCGIやPerlに詳しくなってしまった人のように、テクニカルなスキルというのはシンプルな野望から生み出されるべきなのである。


【作り方・飛ばし方】
美しい姿を褒めちぎっておいて何だが、この第1集の「ハリアー」は飛ばすのにやや難儀する機体である。もともとが高速で飛ぶよう設計された、けっこうアグレッシヴな後退翼を持つ機体であることに加え、基本特性としてピッチング(機体の上下バランス)の調整が下降気味に作られており、そのまま素直に組み付けて飛ばしても機首を下げて落ちてしまう傾向にある。取説には「もし機首があまり上をむくようなら、機首に小さな紙クリップを1コくらいつけて~」と書いてあるが、どういうことなのか筆者には理解できない。子供のときに制作したハリアーも、最近再制作したハリアーも、やはり水平尾翼を強くねじりあげてやらないと飛ばなかった。カタパルトフックをつけたから重くなったとか、そういうレベルではない。当時よほど高速で飛ばしていたのかもしれないが、いずれにせよ元の設計のまま飛ばす場合は、水平尾翼後端を少なくとも2~3mm程度はねじりあげ、機首が下に落ちないよう調整してやる必要がある。また機体の各部品も大きくとられており、急いで作ると歪みやすい。セメダインCを十分に使い、胴体パーツに最大限の注意を払ってまっすぐに貼り付けることを心がけ、割と面積の広い主翼も早い段階で裏張りを貼り付けておき、重しをして平らにしたまま3~4日は放置して乾かすことをお勧めしたい。ピッチング調整さえ済んでしまえば、この機体はそれほどシビアな調整を求められることなく飛行を楽しむことが出来る。取説にある通り下半角を多少つけても機体の安定に大きく影響しないため、2°~5°の下半角をつけて実機のかっこよさを再現したいところ。手投げで飛ばすにもカタパルト射出するにしても、太く持ちやすい胴体のため苦労はしないと思うが、機首の先端がやや鋭い機体であるため、人に向けて飛ばさないよう配慮する必要がある。当たると痛いことを覚えておく必要がある。


【滞空性能】
高速で飛行することを楽しむタイプのプロファイル・モデルであり、滞空飛行にはおよそ向いていないが5~10秒程度は楽しむことが出来るのではなかろうか。高速飛行ならギリギリ落ちない程度に調整した場合、だいぶ遠方まで飛んでいく飛行距離型の特性を示すと思われる。旋回飛行を楽しみたいならピッチング調整はだいぶ上を向くようにし、旋回によって墜落しないようにする必要があるが、それでも高速機を旋回飛行させるには広い原っぱが必須となる。狭い公園でやると木に刺さる可能性が高い。飛ばす場所を選ぶようにしたい。


【改造ポイント】
二宮先生の初期作品は、まず各部品がおそらく手書きで複写されている関係だと思うがズレが割合シビアで、近年の精密で洗練された紙飛行機に慣れていると戸惑うレベルで一致しない部分が出てくる。このハリアーも例外ではない。改造に着手するならば、まず胴体、主翼、水平尾翼の各パーツのズレを補正したい。多層の乗算レイヤーが扱えるソフトウェアであれば根気さえあれば出来るはずである。残念なことに機体のディティールが描かれた機首付近のデザインにもずれがあるため、各部品をレイヤーで重ね、ずれている部分は地道に補正していく必要があるだろう。その上で、まず掲載スペースの都合で、紙の目に対して垂直に配置されてしまっている水平尾翼を、本来あるべき向きに90°回転させて配置させる。(そのために取説のスペースは消してしまってよいだろう)出来ることなら、調整に難儀するピッチングモーメントを楽にするため、水平尾翼面積を増してやりたい。取付角はすでに十分与えられており、変更の必要はないと思われる。


【総評】
かっこいい見た目に憧れて、おそらく大勢の航空機ファンが制作に挑んだと想像するが、ちゃんと飛ばすことのできた諸氏はどの程度いらっしゃるだろうか。後年に登場した第7集「F-16ファイティング・ファルコン」のほうが、機体制作難度に比べてよほど飛ばしやすい特性を持つし、何なら第2集掲載の「XT-2」、第3集、第4集掲載の「超音速ジェット機」のほうがこのハリアーより飛ばしやすいのだが、それでもこの機体の持つフォルムには惹かれるのである。根気とハリアー愛のあるかたはぜひ、チャレンジいただきたい。


▼美しい胴体、特徴的な主翼。子供のときと同じように飛ばせると思ったのだが・・・
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