【概要】アエルマッキ(現在は統廃合があり、アレーニア・アエルマッキとなっている)は、戦争のあった時代にアエロナウティカ・マッキと呼ばれるイタリアの航空機会社であった。機体設計にはこだわり、連合国軍としっかり渡り合った名機を生み出している。例えば、MC.202フォルゴーレ、MC.205Vヴェルトロのように、エンジンこそ同盟国ドイツのダイムラー・ベンツからDB60xシリーズのライセンスを受けて搭載していたが、美しさと速さを兼ね備えた魅力的な戦闘機を開発している。(残念なことに武装は終始貧弱だったようだが・・・)戦後、アエルマッキと名称を変え、マッキは航空機を開発し続けた。このMB-326は、ジェット練習機兼・軽攻撃機として開発され、海外ではライセンス生産も行われた。総生産数はさほど飛び抜けて多い訳でもなく、現在は後継機のMB-339にその座を譲り退役してしまっているが、戦後のイタリア航空技術の発展をかいま見る事のできる機体かな、と今にしてみれば思える。
他のSNSには書いたことがあるが、宮崎駿監督作品「紅の豚」の主人公、ポルコ・ロッソが乗っていた赤い水上戦闘機は、シュナイダー・トロフィー・レース時代の水上機マッキMC.33が元ネタであると思われる。(後退翼の発明は戦中のドイツ・メッサーシュミットMe262からなので、実機の主翼はテーパーだけど。)
「よく飛ぶ紙飛行機集 第1集」の型紙掲載機にはいくつか魅力的なプロフィル・モデルが存在するが、その中では比較的工作のたやすい機体が、このアエルマッキ MB-326である。理由は単純におもりレスで工作ができる点、および特殊形状の部品や難度の高い工作を必要としない点に尽きる。重心点が主翼の中心より前寄りの設計の多かった二宮先生の初期の機体では珍しく、何のおもりも必要とせず飛ばすことができる。型紙掲載機であり、写し取る(今ならスキャンになるだろうが)というハンデのため、作ったことのある諸氏はそんなに多くないのかも知れないが、調整に難儀しないシンプルな形状、多少速度が乗るがどちらかというと滞空型に近い飛行特性、微調整のしやすいオーソドックスな形状の尾翼もあいまって、手軽にプロフィル・モデルを制作したいかたにお勧めできる優等生である。
▲オーソドックスな形状で、初級者にも制作のたやすいプロフィル・モデルである
【作り方・飛ばし方】さほど後退もしていない、翼端失速しにくい主翼、極端なデザインの部位のない胴体は工作がしやすく、かつ曲がりやヨジれを修正しやすく作られている。一応はプロフィル・モデルでありそれなりに太い胴体を持つため、いい加減な工作、特にムラのある接着剤の塗り方をすると歪みやすい傾向はあるが、それでも「取りあえず飛びはする」という状態まで持って行くのに大した苦労は要らない機体といえる。ただ、カタパルトフックを装着するとやや機首を下げ気味となるため、フックを付ける場合には水平尾翼を多少上にねじってやるほうが良いかも知れない。
▲これではまだ調整完了とは言えない。調整こそが紙飛行機製作の主作業である。
【滞空性能】滞空型に近いとはいえ、主翼:水平尾翼の取り付け角を見る限り、滞空性能を狙って作られた機体でないことは明らかである。それでも、見た目よりはゆったりした飛行特性により、うまく上昇させてやることで15秒程度の滞空を狙うことが可能である。カタパルトフックを付け、キチンと歪みを直し、できれば主翼の付け根はセメダインCを流し込んで固着させ、グラつかないよう補強した上で高い空に放り上げたい。初期の機体にしては主翼の裏貼りも翼端まで補強されており、そのままの設計でも折れにくい主翼で飛ばすことが出来る。偶然であるが、このプロフィル・モデルの主翼はエンジン部分を模した箇所が手投げ(親指と薬指を主翼の前端に持って行くスタイル)にピッタリである。低翼機の手投げが苦手というかたは、この機体で練習されると良いかも知れない。
【改造ポイント】設計の観点で申せば、もともと大きめの水平尾翼面積を持つ本機に対しては滞空型紙飛行機への改造を施したいところである。取り付け角を1~2度とし、水平尾翼面積を重心点×胴体長から見直し、よりふんわり飛ぶように改造したい。二宮先生の初期型にありがちの、水平尾翼付近の胴体付け根の脆弱性に対し補強を行っても、本機のバランスが簡単に崩れることはないだろう。他方、精度の観点ではアラの多めの機体であり、特に機尾あたりのズレが著しい。この辺を中心に全体的なズレは補正すると、よりビシっとした仕上がりになるものと思う。MB-326は後期型(K型)で単座機が出ている。MB-326K化の改造を施しても面白いのではなかろうか。
【総評】作りやすく、飛ばしやすい模範的な機体である。低翼トレーナーほど外連身のない優等生ではないが、おもり不要の普通型機であり、誰でも気楽に制作に挑戦することが出来る。アエルマッキの練習機をチョイスする二宮先生は本当にマニアックな趣味をお持ちだと思うのだが、イタリアの航空機は美しいデザインのものが多い。いつかMC.205Vヴェルトロを制作してみたいと思っている。
▲不思議な形状をしているが、飛行特性は割合素直。やや縮めて印字するとより飛ばしやすいかもしれない。