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【レビュー】シンプルな形の無尾翼機 / 第1集掲載(型紙)

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【レビュー】シンプルな形の無尾翼機 / 第1集掲載(型紙)



【概要】
二宮 康明先生はケント紙貼り合わせ式紙飛行機の第一人者であると同時に、様々な変わり種の飛行機の飛行実験に取り組んでおられたことは、「子供の科学」や「よく飛ぶ紙飛行機集」を経験されたかたであればお分かりのことと思う。先尾翼機、串型機、デルタ翼機、そして無尾翼機。先生は高性能の競技用機を50年の永きにわたり設計された一方で、これら変形機を多数発表され、「このような形状の飛行機が飛ぶのか!」という驚きを提供くださっていた。数ある変形機の中でもその度合いが強いのは勿論、水平尾翼自体を持たない形状の無尾翼機である。
 無尾翼機は、工作の単純さはさておき、いざ飛行させるとなると厄介な変形機である。デルタ翼機はまだ良い。幅の非常に長い主翼のおかげで機体構造は頑丈となるし、主翼後端をねじり上げれば取りあえずは飛行するからである。ここで述べる無尾翼機とは、実在機で申せばメッサーシュミットMe163のように、後退角のついた主翼の両端がそのままピッチング・モーメントを制御するタイプの、純無尾翼機ともいえるものである。このタイプは、揚力を稼ぎ出す部分を主翼の付け根~中央とし、翼端にかけて仰角に負の値を与え、主翼の揚力で上を向こうとするモーメントと釣り合わせる、という、まことに繊細なことをやってのけている。言い換えると、やってのけなければ飛ばない繊細なタイプの飛行機なんである。これに関しては、”飛行機がどのようにして空中で安定しているのか”という飛行原理の理解抜きには語れない。今回は詳細は記述しないが、「主翼で揚力(上向きの力)を生みだし、重心点から水平尾翼の間のマイナス揚力またはプラス揚力で釣り合いを取る」のが普通型機、「先頭に配置する水平尾翼と後方の主翼の両方で揚力を得て釣り合いを取る」のが先尾翼機。主翼の後半部を水平尾翼と見なして飛行する」のがデルタ翼機で、今回挙げる無尾翼機はデルタ翼機の同型異種にあたる。
この”シンプルな形の無尾翼機”は、先生が恐らくは「紙飛行機をどこまでシンプルに飛ばせるのか」という素朴な疑問の課程で生まれた作品である(その旨の記述が型紙にも書かれている)。胴体は単純に挟み込みの3枚のみ。主翼は胴体以外の取り付けナシ、胴体が垂直尾翼を兼ねる形で他に部品もない。その気になれば5分で組み上がる単純な無尾翼機と言える。そんな単純な「飛ばしてみることを目的とする」機体であるがゆえ、風には極端に弱く、強風一発で墜落してしまうし、ピッチング・モーメント、ヨーイング・モーメント共に安定しているとは言い難い。制御が安定しないのだから、強力な上昇力をゴムカタパルトで得たとしても、まともには飛ばない。そういうレベルのポテンシャルのお手軽機なのである。ゆえに、このモデルで滞空飛行性能を試すのは用途が異なるし、そのようなことに掛ける手間に対して得られる手取りは僅かとなる。あくまでも、「構造を極力単純にした無尾翼機を飛ばす」ことに主眼を置いた作品として製作にあたることになる。
 

【作り方・飛ばし方】
これほど機構が単純な紙飛行機を製作することに関してつまづくかたはいらっしゃらないだろうから、飛ばし方についてだけ述べる。この無尾翼機は先述した通り、主翼の両翼端後部をねじりあげることで機体の揚力とのバランス、すなわちピッチング・モーメントの釣り合いを取るタイプの飛行機である。ゆえに、完成した機体をまっすぐに補正した後は、主翼の翼端を下向きにねじる調整が必要となる。このタイプの無尾翼機の難しいところは、その調整ポイントが最もローリング・モーメントの力の働く主翼の、しかも後退翼であることも相まって剥離しやすい翼端にあることで、少しでも調整に狂いが生じるとうまく飛んでくれない点にある。元々後退角は付いているので本来ローリング方向は安定しやすいのだが、主翼翼端部分に飛ぶか墜ちるかの調整要素が集約しているがために、中途半端に機体の曲がり・よじれを直しただけでは何が原因でうまく飛ばないのかさえ判らない、という事態に陥る。二宮先生はこの点に関しては、ピッチングとヨーイングをそれぞれ分けて調整することを推奨されている。
 
▲無尾翼機共通の主翼ねじらせ調整。これをキチッとやらないと絶対飛ぶことはない。水平尾翼がない、というのはそういうこと。


この紙飛行機は胴体が非常に小さい軽量な機体であるため、後退角が付いていてもそれほどの速度では飛行しない。ゆえに先生の他作品にある無尾翼機よりもシビアな調整はしなくて済むかも知れない。他の無尾翼機の試験飛行でつまづいた時、まずは本機を作ってエッセンスを感じ取るのも良いかも知れない。
二宮先生は無尾翼機を指して「調整すれば必ずよく飛ぶ」と折に触れ仰っているが、現実問題として無尾翼機を上手に飛ばせるのは機体調整を根気よく行え、かつ無尾翼機愛のある中級者以降に限られると筆者は考える。その中においては、この作品は簡単に製作することが出来、ほぼ無風でないとうまく飛ばないというハンデはあれど、無尾翼機の独特な飛行を楽しむことが出来る入門機と言えるのではないだろうか。

【滞空性能】
構造上手投げオンリーの簡易型であるがゆえ、平地で飛ばしても精々飛行時間は5秒程度と見込まれる。滞空時間を競う目的の機体ではないゆえ、ここは致し方ないところ。

 

【改造ポイント】
先生がシンプルさを追求してお作りになった無尾翼機の何をいじるというのか。改造とは、それによってポテンシャルが引き出されたり、より魅力が高まる結果が期待できるから行うものである。この機体にそれは望めない。精々、貧弱なヨーイングの制御のため垂直尾翼を増設する、あるいは胴体の枚数を増やしておもりレスにする程度の改造にとどめるべきである。高い空に放つ無尾翼機は、それに相応しいポテンシャルを持つもの、例えば近年の先生の一連の無尾翼機シリーズだとか、カタパルトフックを装着出来る型にすれば良い。

 

【総評】
無尾翼機を作ったことがなく、なおかつ興味のある人のための紙飛行機である。興味が沸かなければスルーして他のタイプのものを作れば良いし、すでに無尾翼機の飛ばし方を心得ておられるかたは、本機を製作する必要は無いだろう。多数の機体が掲載されている「よく飛ぶ紙飛行機集 第1集」において、小休止的な位置づけの一機と言えよう。
それにしても、初期作品とは思えない美しい主翼である。
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