忍者ブログ

R3B

ねぎみそは、おいしい(゚∀゚)

【レビュー】小型 超音速ジェット機 / 第1集掲載

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

【レビュー】小型 超音速ジェット機 / 第1集掲載


二宮先生が月刊誌「子供の科学」に紙飛行機を連載されていた頃、航空機、とりわけ軍事用のジェット戦闘機の性能向上が著しく、そのピークを迎えようとしていた。ドイツ第三帝国が苦労して実用化させたターボジェット エンジンと後退翼のアイデアは戦後東西の戦勝国がまんまと持ち帰り、ユンカースTa183を模倣してソ連はMiG-15を、アメリカはF-86セイバーを開発し、当のドイツでさえもMe163Vロケット試験機で辛うじて到達していた亜音速、つまりマッハ1に手の届く世界にたどり着いていた。その後はどんどん性能競争が起こり、当時の東西冷戦構造もあってマッハ2を最高速度とする超音速ジェット機が次々に誕生した。それがおよそ、子供の科学で二宮先生の紙飛行機連載が始まった1960~70年代のことである。昔のかたであれば、函館空港に亡命したベレンコ中尉の操ったMiG-25ジェット戦闘機のことを覚えていらっしゃるかも知れない。あの頃が、性能だけを追い求めていた米ソの戦闘機性能のピークであったといえる。アメリカ軍はF-14、F-15をピークに莫大なコストのかかる過剰な高性能、要するに高速飛行性能に拘泥することをやめ、ロケットに毛の生えた程度の直線番長なだけでなく航空機本来の格闘性能や積載性、電子装備によるハイテク化を推し進めていくことになる。しかし、車やバイクがそうであるように、異なる勢力がしのぎを削って性能向上に努めている頃が最も輝かしく、そして熱いものであると自分は考える。航空機に対するファン個々の熱さが熱気を生み、熱気が誌面に現れる。先生の紙飛行機はその時代にマッチしたからこそ、長年にわたり愛される原動力を生んできたのではなかろうか? そう思わずにはいられない。

このよう?にして、飛行機好きの子供は(あるいはそのハートを持った大人も)高性能航空機の頂点たる超音速ジェット機に夢中になるのである。二宮先生の超音速ジェット機シリーズは、プロフィルモデルを含めるとかなりの数が設計されているが、そのどれもが先生のジェット機愛に溢れており、どれも異なる魅力を放っている……というのは言い過ぎにしても、当時のジェット機に対するファンの熱さが垣間見えるものとなっているのは確かである。

この"小型 超音速ジェット機"は、「よく飛ぶ紙飛行機集 第1集」の切り抜きとして一度だけ登場したもので、以前のエントリーに書いたとおり、恐らくは先生にとっては入門機扱いの「小型紙飛行機シリーズ」のうちの一つだったのだろう、と個人的に推測している。よく飛ぶ紙飛行機集が絶版し、縮小版になった後も生き残った先生の初期の代表作といえる「小型 競技用機」、「小型 ソアラー」はもちろん、見た目より良い飛行性能で第3集のセスナ210センチュリオンのベースにもなった「小型 軽飛行機」や珍紙飛行機の走り「小型 円形翼機」も、比較的単純な部品構成、小型機であるため歪みにくく作りやすい胴体を持ち、いずれも初心者にも作ることのできる難易度の易しい機体であったと言える。この"小型 超音速ジェット機"は、高速飛行しそうな後退翼、するどい機首を持つ機体ながら、実際は通常の普通型機と大差ない感覚でふんわり飛ばすことのできる、これまた初心者に易しい紙飛行機なのである。要因は小型であること、見た目より実際は主翼の後退角が低く作られ(工夫され)ており、同時に後退翼機にありがちのキリモミ状態に陥りにくくなっていることが考えられる。加え、二宮先生の初期型の設計であることもあり、水平尾翼に切り込みを入れる必要のない構造をしている。カタパルトフックもなく、頑張れば小学3年生程度でも完成→飛行にこぎつけることができるだろう。


【作り方・飛ばし方】
オリジナルの設計のままであれば、作成にあたって躓く要因は殆どないといえる。滞空性能の良い紙飛行機と比べやや飛行速度は高いため、雑に作るとグルリと回って墜落するだけとなるリスクはややあるが、二宮先生の超音速ジェット機シリーズの中ではだいぶ機体調整が楽な部類であり、多少曲がりや捩れがあっても飛行はするだろう。言い換えると、この機体をまともに飛ばせないようでは、先生のジェット機作品("XT-2"、"F-4ファントム"、"超音速ジェット機(第3集、第4集掲載)"や"F-16ファイティング・ファルコン"、”F-15ストライクイーグル”など)をまともに作って飛ばすことはかなわないであろう。二宮式の紙飛行機では、高速飛行する紙飛行機の調整が最も難しいのである。特に、半年、1年と紙飛行機を保存していくにあたっては、湿気を吸って主翼が歪むことに対して細かな調整(手でなおす)や対策(ラッカーを塗布する)が必要となる。
主翼は胴体の上に付いているオーソドックスな高翼機であり、カタパルトフックなしでも手投げで楽に飛行させることができる。そのあたりは、他の高翼機とノリは変わらない。ただし、ラフに投げたり、弱い力で投げたとき、制御を失って墜落する頻度は通常型より多く見られる。気持ち強めに、やや下向きに飛ばすのが良いと考える。


【滞空性能】
見た目よりも割合ふんわり飛行する性質のためか、10秒以上の滞空を楽に狙える。カタパルトフックをつけてゴム射出すれば20秒飛行も夢ではない。歪みなく正確に主翼、胴体を貼り合わせ、きちっと水平尾翼を取り付けて歪みをとれば、手軽に気持ちよく飛ばすことができる。軽飛行機タイプほど滞空はしてくれないが、持ち前の後退翼を利用して強めのゴムカタパルトで高い空に放り上げれば、この機体を作ってよかったと思える十分なパフォーマンスを示してくれることだろう。


【改造ポイント】
お馴染みのカタパルトフック増設、また重心点が後部に配置される後退翼機であるがゆえ、簡単におもりレスに出来るので機首付近の部品を2枚追加して重心点をクリップなしで調整出来るようにする。また、二宮先生の初期の機体であるがゆえ主翼の補強がプアなので、"小型 軽飛行機"と同様に、主翼の裏貼りを翼端までキチンと延長し、強力なゴムカタパルト射出に耐える主翼にしてやると、より満足度の高い機体になる。
補強面で申せば、垂直尾翼、水平尾翼も補強するべきといえる。後退翼を持つ機体のためどうしてもグルっと背面飛行に移ることがあるのと、カタパルト射出に耐えるには尾部の貼り合わせ枚数が3では心もとないためである。これら補強を加えた上で、機首2枚部品+カタパルトフックだけで重心点を釣り合わせることが可能。図面の誤差も他機首より少なめであり、非常に改造が楽な部類といえる。

高度な改造としては、主翼:水平尾翼の取り付け角度を減らし、水平尾翼面積を増大させる、いわゆる滞空型への設計変更が考えられる。ただし、ある程度速度を乗せて飛ばすのもジェット機型紙飛行機の魅力であるため、あまり極端な変更は加えないほうが良いかもしれない。


【総評】


二宮先生の小型超音速ジェット機は、この第1集のもの以外に第4集でも掲載があり、そちらでもキリモミしにくい形状の主翼を積んだお手軽飛行を楽しむことが出来る。この第1集の機体は
どちらかというと第3集の末尾に掲載された型紙「超音速ジェット機」のミニチュア版といえるかも知れない。それぞれに飛行特性は異なるし、この第1集版は作りが古いため性能上は一歩、後続に譲るかも知れない。しかしデザインの美しさは個人的にはこちらが一歩上だと思っている。
自分がかっこよい紙飛行機を作ること、それがまずはモチベーションを保って工作に没頭するための動機付けになるのではないだろうか。

本機は、手軽に作成でき、手軽に改造出来る優秀な小型機である。
PR

コメント