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【レビュー】ハンドランチ用競技用機(N-1874 / 二宮康明の紙飛行機集5)

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【レビュー】ハンドランチ用競技用機(N-1874 / 二宮康明の紙飛行機集5)



【概要】

最高の滞空競技用・紙飛行機とは、一体何だろうか?

その厳格な定義や前提条件については、本エントリーでは議論しない。いつもの通り、ここで述べる「紙飛行機」とは、紙などを貼り合わせて作られる胴体と主翼を持ち、動力源を持たずに滑空する屋外向けグライダーのことである。最高の滞空用競技用紙飛行機とは、勿論「最高の滞空性能を持ち合わせた競技用機」のことなのだが、現実的に工作のできるレベルでそれを実感するチャンスが、並の(この場合、才能とは無縁のという意味合い)工作スキルで叶うものか、というテーマのもと、本エントリーを記す。

二宮先生の紙飛行機が著名になったのは、ご本人がプロフィールで記載されている通り、1967年にサンフランシスコで開催された第1回国際紙飛行機大会で先生が出品された競技用機(N-078)が、「滞空時間」+「飛行距離」の2部門で1位を獲得したからである。その時には既に、先生は紙飛行機の滞空時間の改良に励んでおられ、その進化のさまは後年の作品を追うごとに見てとれるものとなっている。(随分と勝手に)大まかに纏めると、二宮先生の競技用機に関する大体の進化は以下のようになる。
 *筆者の主観によるものであるため、ファンのかたはあまり気を悪くされないで頂きたい。
表1:二宮先生作の滞空用競技用機の変遷(超主観)
Term主な特徴
①「子供の科学」連載前後
1967年~1975年
書籍:紙飛行機集第1集~4集
・長めの機首
・デザイン重視の美しい主翼+尾翼
・取り付け位置25~50%の重心点
・主翼取付角=約2~3°
・水平尾翼容積比Kh=1前後またはそれ以下
②改良期(1)
1976年~1984年
書籍:紙飛行機集第5集~第7集
・水平尾翼に揚力を発生させる仕様の設計が誕生(以降の設計方針の重要な前提となる)
・水平尾翼の上向き揚力による重心点の後退に伴い、おもり不要の機体の増加
・主翼取付角=1~2°
・尾翼付近の強度が改善され、ゴムカタパルト射出の安定性が向上
・水平尾翼容積比Kh=1~1.2以上
③改良期(2)
1985年~1998年
書籍:「新選」シリーズあたり
・White Wingsシリーズの登場、北米でもヒット
・性能向上のため、競技用機の胴体がよりシック、かつ高強度に改良
・やや大型、かつ高性能のハンドランチ用競技用機の登場
・主翼取付角0.5~1度、かつ重心点が更に後退
・より高い揚力を持つMOSTウィングの登場
・カタパルトフックの紙フック化
④円熟期(1)
1999年~2013年
・実績のある高性能モデル(Sky Cubシリーズ)の設計をベースにした機体の増加
・過去作品の改良機の登場
・ホチキスペグや棒胴機など、低難度工作の機体の増加
⑤円熟期(2)
2014年~2016年
・発表機種が全般的に小型化(近年の事情に配慮?)
・おもりを使用する短い機首+大容積の水平尾翼を持つソアラー型競技用機シリーズの登場
・「子供の科学」連載最終作品(N-3040)に至るまで、胴体が限界までシックに設計された
※むろん、こんな、1時間程度でまとまったいい加減な5タームで二宮先生の紙飛行機が語れるはずもなく、あくまで雑な区分けに過ぎない。“円熟期”などと失礼な書き方をしているが、あくまでいち紙飛行機ファンの率直な感想ということでご容赦頂きたい。


 失礼ついでに正直な感想を述べれば、二宮先生の滞空用競技用機の性能、即ち滞空時間については、上表の③の段階でひとつの頂点を極めたものと考えている。その中でもハイエンドの機種と考えられる「ハンドランチ用競技用機」は、その細く洗練された胴体、高揚力と安定性に特化された主翼から構成され、工作も並の労力では完成せず、調整に長い時間をかけて微調整を繰り返す、もはや紙飛行機の範疇に収まらない大変な手間のかかる、そしてそれに見合った滞空性能を持つ紙飛行機である。その飛行する姿を見れば、先生のハンドランチ用競技用機の持つポテンシャルを誰しもが肌で感じ取れるものと思う。その中でも筆者が特に気に入っているのが、今回ご紹介する「ハンドランチ用競技用機(N-1874)」である。上昇中の主翼の乱流で舵を失いにくい“下付き”の垂直尾翼を持ち、二宮先生必殺の2段上半角により得られる高いローリングモーメントの回復力により、ほぼ垂直に射出しても高い高度で滑空を始める。主翼付け根からキャンバー(わずかに丸く曲げること)を実現した二宮式のMOST翼によって、調整未完了の機体でも30秒以上、キチっと調整すれば確実に1分を超す滞空性能を示す。筆者にとってはこのN-1874が現段階では脳内最高の滞空型競技用機だと思っている。これは筆者個人の思い入れに過ぎないのだが、限られた時間、限られた環境で作り続けた紙飛行機の中では、という意味合いがあることを併記しておきたい。



【作り方・飛ばし方】
・この紙飛行機は高性能=高滞空性能をハイレベルに追求した競技用機であるため、各部品が非常に細く、華奢に作られている。このため、カットの時点で部品に切り込みを入れてしまったり、折り曲げたり等のミスのないよう、注意を払って工作を進めることになる。まだ二宮式紙飛行機の製作に不慣れな諸氏は、本作品のようなハイパフォーマンスモデルに取り掛かる前に別のスタンダードな機体(先生の競技用機集のNo.1に掲載されるような機体)で、競技用機製作に慣れてからチャレンジすることをお勧めしたい。大人の諸氏は特に、寝不足・疲労・飲酒時に作業しないことが重要である。

・カットを終えたあと、まずすることは各部品の「合わせ」である。これはこの機体に限らず行うべきことであるが、細い細い胴体、主翼、水平尾翼の形状を指で触って覚えておくことで、貼り合わせの工程の完成度をやや上げることができる。ただし主翼のキャンバーはこの時点では与えてはいけない。貼り合わせるものは貼り合わせて、完全乾燥したのちに曲げるべきである

・接着剤の分量は基本的に惜しんではならない。見た目のキレイさよりも、部品間がキチっと接着され、セルロースの固着によって胴体や主翼を支える強度を保つほうが遥かに重要である。先生の説明によれば、薄く塗って貼り付ける(この間10秒程度)のが理想、とのことだが、これは口でいうほど簡単にできることではないし、筆者もやっていない。隙間のできないようにセメダインCを塗り、慌てずに貼り合わせる部品をそっと置き、手でゆっくりと合わせていく。まずはそのやり方で良いと思っている
お前の溶接は キレイすぎる
一番大事なコトは キレイさか?
溶接は バチッとくっつけるコトだろうが(湾岸MIDNIGHTより)
・胴体の接着は、できれば①~⑤までとそれ以降との間に乾燥時間を設けたほうが良い。胴体は貼り合わせ枚数を増やすほど、後で曲がりや捩れの修正が難しくなるからである。まずはゆっくりと5枚貼り合わせ、適度に圧力を掛けて余分な接着剤を追い出してキレイにしたあと、貼り合わせに隙間がないことを確認し、ティッシュ等でくるんで厚い書籍に挟み、1日~2日乾燥させる。その後に続きを行えば良い。待つ必要はない。その間他の紙飛行機の製作なり、設計なりに取り掛かっていれば良いからである

▲貼り合わせ終えるまでに、何度も眺めては確かめる。その繰り返し

・本機の主翼は2段上半角である上、MOST翼でもあるため工作に手間がかかる。「今日は主翼を作る日」という風に、胴体製作とは分けて集中力を確保することをお勧めしたい。作成工程は
→主翼裏張りの接着、乾燥(2日)
→中心部のキャンバー付与&接合、角度調整および乾燥(1日)
→翼端の接合、角度調整および乾燥(1日)
が筆者の感覚である。生乾きになるまでの数時間で主翼の上反角をゲージにキチンと合わせ、できるだけ正確に角度をつける。スタンドを作って主翼角度が変わらないようにする。それでも完全乾燥後にズレる訳だが、何もしないよりはずっと良い

 ▲主翼は一度に組み立ててはならない。中央から翼端にかけて1つずつ仕上げること


・ラッカー塗布:塗ったほうが良い。筆者は長年ラッカー塗布に抵抗感があったが、同時に紙飛行機が早い段階で湿気で歪み、修復不能になるケースが多発もしていた。(先生の教えに反するが)使い捨てで良いならば塗らなくても良い。だが、大事に製作した機体は長持ちさせるべきである。Mrカラー等から出てきている有機溶剤系(水性じゃないほう)のクリアカラーを吹くだけで良いので、実施をお勧めする。マット系は失敗率が高いので、ツヤありのほうで

・試験飛行:本作品はおもりレスの機体であるが、軽量を追求した高性能競技用機であるがゆえに、作り方によっては重心点に釣り合わないことがあるようである。設計上、ギリギリまでゆっくり滞空するように作られているためだと思われるが、水平尾翼の昇降舵(エレベーター)の調整では厳しいと考えられる場合は、機種に部品を追加して重心点を微調整することも念頭に置いたほうが良いだろう

・本飛行(打ち上げ):どの紙飛行機もそうだが、まずは利き手に機体を持ち、ゴムカタパルトないし手投げで軽めに射出し、飛行機がどちら側に旋回していくかを見定める。生真面目に調整を終えていてまっすぐ飛行する場合は、どちらかにやや旋回するよう垂直尾翼、水平尾翼を調律する。本機は下向き垂直尾翼を備えているため、ほぼ垂直に射出しても、よほどピッチング方向が強いセッティングでない限りは高い高度で滑空を始める。あとはその優雅な飛行を楽しむだけである



【滞空時間】
 ここまで偉そうなことを書いておいて誠にお恥ずかしながら、筆者は本機を「調整完了した」といえるレベルまで弄り倒せていないが、それでもこの機体で、下降気流の生じる河川付近、悪天候など高揚力が見込めない環境下においても30秒以上の滞空結果を得ている。上昇気流の強い原っぱで調整済みの機体を強力なゴムカタパルトで打ち上げれでもすれば1分以上の飛行は間違いなく、先生のおっしゃる通り「飛びすぎて視界没」に至るリスクも非常に高いものと考える。慎重に丁寧に作成した紙飛行機だからこそ、飛ばす場所とコンディションには注意が必要である。そのくらい、よく飛ぶ感動的な高性能機である。



【改造ポイント】
 非常に完成度の高い機体であるがゆえ、いじるところは殆ど無いように思える。強いて挙げれば垂直尾翼で、いくら滞空性能特化のゆったり飛行が自慢の競技用機とはいえ、1枚ペラではやや心許ない。垂直尾翼を補強する部品を追加する程度は行っても良いかもしれない。但し、筆者が試した限り、バランスが崩れピッチング傾向が強まるため、カウンターウェイトとして機首に1枚部品を追加するべきかもしれない。


▲わずかこれだけの部品追加でも、重心点は狂ってしまう




【総括】
 二宮先生の50年以上にわたる紙飛行機作品の中でも、とびきりの滞空性能を持つ機体である。また同時に、最も丁寧で繊細な調整を求められる上級者向けの難しさを併せ持った機体でもある。筆者自身不十分なのだが、紙飛行機は製作して調整に入ってからが本番。残念ながら、現実問題として試験飛行中に池ドボンして失われることが無いとも言えず、飛ばす場所、天気や混雑状況など、様々な観点で注意を払って仕上げることも大切である。工作に長い時間を要する機体だが、「紙飛行機ってどのくらい飛んでいられるの?」と疑問に思ったかたは、この機体を製作されてみると良いと思う。
個人的には、二宮康明先生の最高峰のパフォーマンスを味わえる機体だと考えている。



垂直尾翼の改造のため、ピッチング気味のお恥ずかしい飛行だが、飛行時の動画をご紹介する。
(Twitterリンク)
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